2018年8月12日日曜日

吉田秀和/『二十世紀の音楽』

吉田秀和の『二十世紀の音楽』が重版出来。これは名著だ。
 クラシック音楽の本と言えば下らないものが大半である。作曲家の下劣なゴシップネタ一覧と、ななめ読みの駄本が量産される中で、一般向けの教養書として、読むことのできる本を見つけるのは本当に難しい。特に二十世紀の音楽となると誰も書く事が出来ないのが現実である。二十世紀の音楽に起きた変革、特に、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルン等が先鞭をつけたいわゆる「十二音技法」等の作曲方面での変革は、「崩壊」と言ってもよいほどのもので、彼らの音楽は未だ新鮮な響きとして、つまりは、難解な響きとして我々の耳に迫るが現状である。そんな中で、吉田秀和氏の『二十世紀の音楽』は、二十世紀の音楽が耳に奇怪なものとして響く読者に寄り添い、歴史的経緯と、構造を簡単に解説し、これら一定の擁護によって、再び読者を二十世紀の音楽に向かわせてくれるという点で、最良の本なのである。読んでためになるだけではない、趣味まで増えてしまう。音楽の趣味をさらに広げてみたいという人には格好の一冊と言えましょう。

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