2018年9月5日水曜日

『古代ローマ旅行ガイド』と『バルトーク音楽論選』

 7月に買った本は『古代ローマ旅行ガイド』『バルトーク音楽論選』の二冊。ちくまさんは、電子書籍に積極的ではないようなので、紙の本を購入した。


 『古代ローマ旅行ガイド』は、ほとんど題名と表紙で買ったようなものだ。ローマと言っても、カエサルやらキケローやら偉人への興味が先に立つのが教養界の特徴で、どうもこの驚くべき国の様子については、なかなか触れることができなくて今日まで来た。喉の渇きに水、砂漠にオアシスと言うわけだ。『古代ローマ旅行ガイド』と、ちょっと俗受けを狙ったような感じもするタイトルだが、どうせこの手の本を書こうと思いつくのは、碩学の方ぐらいである。にわか仕立てでは一行も書けやしない。なぜなら、この手の本の中には、実在する(した)ローマ人の生活サイクルをもとに、読者への興味を引き立てる必要があるからだ。必要な作業は蘇生である。作文の上での蘇生。でなければ、誰もローマに行ってみたいなどと思ったりはしないだろう。生活環境は、遠隔地であればどうしても異なるもので、我が国においても、県ごとの生活スタイルで一つテレビ番組が出来上がっているくらいで、いわゆる風習の類は、どうしても人の目を引かずにはおれない。これの応用がバルザックの小説だ。つまり、旅行ガイドには、バルザック的手腕が必要なのである。
 碩学とともに、ユーモアも欠かない本書は、紀元前後ローマ旅行ガイドとしては優良の書と言えましょう。食べることのできない食べ物、見ることのできない史跡や出し物に思いを馳せましょう。
 挿絵多数、引用豊富。ラテン語例文集は、何の役にも立たないこと請け合いです。


 バルトークは、近現代作曲家。この名前を見ると、独特の渋い不協和音と荒々しいリズムを思い出すのであるが、民俗音楽の収集家としても有名である。